やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

俺たちが超えるべき103万円の壁と財源の話


 個人的にはもう一定の結論が出ている話で、まあやれとなればいろいろと模索して着地させられるところまで来てるので、あとはえらい先生方が譲れるものとそうでないものを捻り出していただいて最後はエイヤで調整、ということになるんだろうとは思うんですが。

 今日日曜なのにまだその手の話の最終調整ができていないってことで、背広こそ着ないもののあーだこーだ調整したり、先生方のお話を受け取って右往左往したりする役割を仰せつかっております。大変だなあ。

 で、今後怒られ覚悟でいくつか私見を記事にも書く予定ですし、善処すべきところは善処するということで話をするつもりですが、今回の一連の所得控除については「国民民主党」だけが与党での具体検討の俎上に載っている、というのがミソです。

 自由民主党と公明党さんとの間で絶対安定多数だったころは、閣議決定さえすれば原案通り粛々と委員会で審議され国会を通過する前提でしたから、与党では両党の事前審査から与党PTで調整されれば法律はできたようなものだったわけです。そこの事前審査の枠組みに国民民主党も投げ込んでいいよという話になりますと、これはもう連立与党にもっとも近しいところで国民民主党の考えている政策を反映させられる仕組みにしますということで座組がどんどん進んでいく、進んでいくかなあ、進むといいなあというのが大前提となってきます。

 他方で、国民民主党案を丸呑みしていいのかという与党議員も割と少なくなくおります。もちろん、何かよく分からんことを言って国民民主党だけ入れていいのかってことでわいわい言っている人もいますが、そういう感情論やプライドの話を抜きにしても、103万円の壁とか分かりやすいけど政策論としてはイマイチ詰まっておらず、財源問題も勃発するこのタイプの話はやっぱりちゃんと政策として詰めないといけませんから、現実的な落としどころを考えていくと当初国民民主党が言っていた案から随分離れたところに着地する可能性だって考えられます。それで玉木雄一郎さんや榛葉賀津也さんが「良し」と言ってくれるものなのかね、というのは不安材料になります。

 さらに、現在「まあいいか」と思って受け入れる方向でまあまあ話が進んでいる本件も、蓋を開けてみたら問題の重大さに気づいた地方首長や知事がそぞろ騒ぎ始めました。いや、分かってたことなんだから騒ぐならもっと早く騒いでほしかったと思うんですが、これはまあなかなか大変なことで、それこそ国民民主党が騒いでいるころから私なんぞはネットでそれ系の話を一か月も前に整理して書いておるわけです。さすがに「ボク言いましたよね」ぐらいは言う資格あるんじゃないかと自分でも思います。

国民・玉木雄一郎はなぜいま叩かれる?「手取りを増やす」がぶち破るべき本質的な「130万円の壁」とは 『ネアカの第三極』国民民主党・玉木雄一郎と榛葉賀津也の超モテ期はいつまで続くか

 さらに、地方交付税を元銭にする話、それ詰めてって大丈夫なのかと思ったら、やっぱり不交付団体で黒字の自治体の話が出てきました。いや、もっと先に言えよと思うんですが、まあそれは与党調整の方向が定まらないうちから言うといかんというエレガントな話だそうなので文句を言う筋合いのものではないにしても、とにかく「真面目に頑張って予算内で納めたり自主財源がしっかりあったりする自治体ほどこの枠組みでは損をする話」なので、一般論としては有能な自治体が事実上の罰を受け、高齢化が進み過ぎてどうにもならない自治体や地域内産業が壊滅している自治体はダメージが小さいという仕組みで本当にいいんですかという話になります。

 さらには、これから石破茂政権が根性入れて取り組もうとしている地方創生が、まだこれから何するか良く分かんないけどとりあえずやる方向で進んでいます。地方創生予算だけで倍と言ってますから、それはそれでインパクトはあります。正直この辺どうすんだいというのは割とど真ん中で起きる悩みで、結論が出ないんじゃないかと思います。

 どう落すかまだはっきりしないトリガー条項凍結解除についても、岸田文雄政権で俺たちの嶋田隆さんがばっちりやり切った政策についてどこまで整理し直して国民へのばら撒きをやり直すのかという話になりますから、早いところ目標を決めて実質的な議論ができればなと。

 で、国民民主党にどこまで花を持たせるのか、また、駄目だったときのオルタナティブとして日本維新の会や立憲民主党ともきちんと話はしておこうという流れになるのかどうかというのが重要な話題になってきています。これは、適当なばら撒き話をして国民からの関心を集め好き放題言いやがってってのは自由民主党よりも立憲や維新からクレームが来る話で、しかも立憲民主党の働き控え解決策のほうがかなりデキが良い(こう書いたら私も怒られますけれども)ので「立憲案でいいじゃん」って公明党さんが言い始めると枠組みが壊れかねません。

 むしろ、いまメディアからわいわい言われている国民民主党案の「財源はどうすんだい」って批判でわいわいやっているぐらいが一番いい塩梅なのであって、ここから制度的に実装する案が進んでいくと、具体的にどこの自治体がどのくらい減収になりそうか、自主財源が削れて即時支給できない地方交付税交付金分をどう繋ぐのかとかいうテクニカルな話になっていきますから、実にむつかしいところですね。

 結局、これから分離案とか言い始めると思うんですが、それであったとしても、臨時財政対策債を出す出さないという話も調達コストもあり一時的に負担も増えますし、特別交付金でつなぎ融資的にどうにかするにしても限界はあるでしょう。

 その結果、地滑り的に成り立たない自治体を中心に自治体再々編の動きなどが出てきた際に、よりによって少数与党の石破茂政権でそんな爆弾処理するんですかいという話は想定しておく必要があります。少なくとも参院選前にそういう変な爆弾持ち込んでくるのはやめてくれよという気がします。まあしょうがないんでしょうけどね。

 ――書いていて、本当にこの状況で地方創生やるんですかっていう気持ちに、改めてなってきました。誰かたすけて。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.460 103万円の壁と財源について思うところを語りつつ、日本人女性の海外失踪問題やAI活用これでいいのか事案に触れる回
2024年12月2日発行号 目次
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【0. 序文】俺たちが超えるべき103万円の壁と財源の話
【1. インシデント1】「タイへの出稼ぎ」日本人女性が複数失踪している件について
【2. インシデント2】バカとハサミ、そしてAIは使いようという話
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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